「それで、ボクと過した二年目はどうだったのかな?」
世間は大晦日の夜、昼間はどこもかしこも人でごった返していたというのに、今はもう除夜の鐘を待ちわびるだけの静かな夜になっていた。
とはいえど年の瀬、深夜から初詣へ出向く人々や年越しを誰かと過す人々の往来で普段とはちょっぴり違う夜になっていることも否定できない。
そんな街のざわつきとは少し離れたこの家で、僕は彼女と二人だった。
二年目ねぇ…… 結局普段と変わらない日々を送り、特筆することもないままこうして大晦日の夜を迎えた人間にこんなことを聞かないで欲しい。
「僕から見た君も講義出てバイトに行って、家ではお酒を飲んで僕に吸い付いてるイメージしか無いのだけれど。」
ぐうの音も出ない。ぐぅ。
「まあね、お酒に飲まれてるときは遠慮無く僕を求めてくれる点に関しては素直に嬉しかったさ。家からいなくなったと思ったら一時間後くらいに傷だらけで戻ってくるのは考え物だけど…。痛々しいんだからね、その傷。」
ごめんなさい。
酒飲んで外出て朝起きたら傷だらけとか本当になんなんだろうね。
「僕と過ごせて楽しかったかい?」
当たり前だろう。楽しくなかったことの方が少ないくらいなんだから。こうして肩を並べて、二人で年を越そうとしている瞬間が幸せで無いわけがない。グラスにワインを注ぎ入れていると物言いたげな目でこちらを見られたような気がするが彼女にお酒は厳禁だからな…
「君ばっかりお酒を飲んで、僕に不誠実だと思わないのかい?」
「まあ、君のそういう僕を一番に思ってくれるところが大好きなんだけどね。」
二つのグラスを重ね、心地よい響きを奏でながら二人で時計を見る。
「もう日付も変わりそうだね。来年も僕と一緒にいてくれるかい?」